空の駅になった旧余部鉄橋の在りし日の光景。

w02k-m-amarube.jpgw02k-s-amarube01.jpgw02k-s-amarube02.jpgw02k-s-hodugawa.jpgJR山陰本線・鎧駅〜餘部駅間にある、明治45年(1912年)に完成した高さ41m、長さ310mの余部鉄橋(余部橋梁)。鉄道好きなら誰でも一度は訪れる鉄道絶景ポイントの一つです。

上の写真は、1983年(昭和58年)6月に、京都からキハ82に乗りに山陰を旅した時に、香住駅から鈍行に乗り換えてオハフ45の後部から撮影したもので、今思えばこの餘部駅で下車してじっくり鉄橋を撮影すれば良かったのですが、その時はキハ82に乗って大興奮していたのと先を急ぐあまり、残念ながら橋は二の次になってしまいました。


web002kiha82.jpgw02k-s-suha43.jpgしかしその当時キハ82にしろ、45系客車にしろ廃止寸前で、その写真が撮れただけでも満足で、鉄橋の寿命が2010年にやって来るとは考えもしませんでした。でも客車の中から撮影できただけでもラッキーで貴重な一枚となりました。

この日は梅雨の合間の晴天でかなり暑く、ほぼ真夏の様な天候で、特急『あさしお』の車内もユニットクーラーがフル回転の状態で、駆動用のディーゼルエンジンと発電用のディーゼルエンジンそしてクーラーの音が混ざって、会話も聞き取れないほどの騒音でしたが、香住駅に降り立ちキハ82が出発して、遠くゆるい右カーブに消えて行くと、あたりは一変して静寂に包まれ、音といえば小鳥のさえずりだけと思いきや、ホームの待避線で出発を待つ鈍行客車の先頭にたつDD51のアイドリング音が、低音ながら軽快なリズムを刻んでいました。

そして間もなく発車のベルが鳴り、ガタンッ!と音をたて、轟音とスピード感が釣り合わないDD51に牽引されたオハ45系が香住駅を発車。いくつかのトンネルを抜け、合間合間に日本海を眺めつつ、想像以上の低速でゆっくりとのんびりと進み、鎧駅を経て、少々長いトンネルを抜けると突然風景が開けて、いままで聞いたことのある鉄橋の通過音とは全く違う、反響音の大きい音が響き渡り、もうカメラのシャッターを切ることで精一杯の状態で、風景を楽しむ余裕もなく餘部駅に到着。とにかく今までゆっくりだった速度がやたらに速く感じて、眼下を家々の屋根が流れて行き、高所恐怖症だったことも忘れ、「これが余部鉄橋だ!」と大感動してしまいました。

冷静さを取り戻し数枚の写真を撮りましたが、30秒もしないうちに発車。余部鉄橋との出会いは、ほんの一瞬の出来事でした。
そのあとは浜坂駅で下車して、上り特急『あさしお』に乗車して一路京都へ。しかしグリーン車に乗ってリクライニングシートにゆったり座ったことと、2日前の夜に上野を急行『八甲田』で出て、青森で急行『きたぐに』に乗り換え日本海側を一気にで京都まで来た強行日程がたたってぐっすり寝てしまい、上りの余部鉄橋は見ずじまい。なんとももったいなや!
そのかわり京都から乗った東海道新幹線ではバッチリ目が覚めてしまい、ただただ単調な風景を眺めて帰るという、ややガッカリの旅でした。

そんな絶景の余部橋梁も長年の風雪にさらされて老朽化が激しくなり、2010年(平成22年)に完成したスマートな新橋梁に役目を譲りました。しかし地元やファンの熱い要望で、西側の橋脚と橋桁の一部を残して「空の駅」と呼ばれる展望台と変貌し、イベントスペースになったり、特産物を販売したりと、餘部の新しい観光名所となっているようです。

余部鉄橋の本は【Amazon】で購入できます。

鉄橋の本『今は鉄橋渡るぞと 〜明治以来、天空を翔る鉄の花道を渡った列車〜』は【楽天市場】で購入できます。