以前キハ82、C62のウェザリング(風化による汚れ)のお話をしましたが、今回は第三弾として、D51を取り上げます。今回も例によって筆による『ドライブラシ』で作成しました。
※【ドライブラシ】=汚れに見合った色のラッカーを調合し、ラッカー溶剤で少し柔らかめにして筆に含ませてからタオルで拭き取り、筆先をドライな感じにさせて、プラ板などに試し塗りしてタッチを整えてから車体のプラスチックを溶かさないよう手早く汚す技法。
エアーブラシでマスキングを多用し繊細に仕上げる方法もありますが、実際には150分の1の縮尺という人間のスケール感から見るとあまりにも小さな世界なので、ほぼ認識出来ないものになってしまいます。手にもって近くで鑑賞するのであればそれでも良いのですが、多少オーバー目の方が編成にして走らせた時に実在感があります。なので、ドライブラシがお勧めの技法です。
上の2枚の写真は同じ物ですが、拡大したものはかなりコテコテ感がありますが、通常のレイアウト上で見るようなサイズに縮小した写真ではかなりの重量感と実在感があります。
そもそも実物を模型にする時に、全てのディテールを均一に縮小するとのっぺりした物になってしまうので、小さくした時にでも原型が持っている特徴を最大限生かすために、縮小率のアレンジをしているものなので、このザックリとしたウェザリングもそれと同様表現方法なのです。
それが解れば、汚しがいかに創作的で、尚且つ空想や妄想が大胆に活かせる分野であるかが、お解りいただけるかと思います。鉄道雑誌に載っている実車の写真を見ながらその通り行うのも良いですが、大まかに記憶してあとは勝手にその車輌の経歴を妄想し、ウェザリングをするのも醍醐味です。今からでも早速やってみましょう!
ということで、D51のウェザリングの話に戻ります。...同じ蒸気機関車でもその傷み具合は、形式やそれに伴う使われ方、地域特性によって大きく違います。
前回紹介したC62は、元々東海道本線で花形特急列車を牽引していて、いつも『見た目』のメンテナンスも整っていた機関車ですが、このD51はその製造数も1,115輛と単一形式としては最多で、しかも蒸気機関車の時代が終わる最後の時まで酷使されていたので、とても『見た目』のメンテナンスまで手が回らなかったようで、現役時代にキレイに洗車されたD51など、どの地域にいっても見たことはありませんでした。とくに貨物列車が中心の使われ方だったので尚更です。
だからウェザリングの対象車としては、最適のモチーフなのです。何台もウェザリングして地域の特色を出すのも面白いかもしれません。
今回のこのD51のウェザリングは1970年頃の伯備線の新見機関区に所属していた何輛かの車体を参考にしました。車体細部の仕様は多少違いますが、汚れ具合は山陰と山陽を結ぶ伯備線っぽくなっていると思います。あくまでも感覚的に、ですが...。
使うラッカーは、極ありふれた物で構いませんが、好みによっては赤錆色を使っても良いです。ただ大抵の色は3原色の赤系、青系、黄系と白と黒があれば、混合して出せますし、むしろ質感のバリエーションを醸し出してくれるのはクリアラッカー(つや出し)と、つや消しラッカーです。
これは混ぜて使っても良し、塗った後にドライブラシで重ねても良しと、かなり重宝します。水汚れ、油汚れ、鉄錆と汚れの種類には様々ありますが、これだけあれば充分です。
あとは失敗を恐れず大胆にやって見ましょう。多少の失敗を繰り返さないと上達しないし、醍醐味に到達出来ません。もし取り返しがつかないほどの大きな失敗をしてしまったら、諦めて全体を錆色に塗って廃車とし、レイアウトのヤードの片隅の雑草の生えた線路にでも放置してみましょう!とてもリアルな光景になります...。ですが、なかなか失敗する物でもありません。
ただ最初は、とにかくラッカーを付けた筆はタオルでしっかりと拭き取り、かなりドライにしておくことです。徐々に加減が掴めたら、適宜ゆるめのドライブラシもやってみることです。
あと言い忘れましたが、駆動系の可動部分の汚しは最小限にとどめないと故障の原因になりますのでご注意を!
また、実車で乗務員がよく触れるところや、日頃メンテナンスする箇所などは、逆に奇麗にしておくと、よりリアルです!
ウェザリングが完成したら、先導車輪を別売のスポーク車輪にしてより実車感を出したり、先頭部のダミーカプラーをレギュラーなカプラーに替えて、実在感のある重連運転などをしたりと、充実のNゲージライフを楽しめます!
次回のウェザリングは『485系』を、ご紹介するつもりです。
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